【家族信託】家族信託と遺言書はどちらが優先されるのか?

家族信託

家族信託と遺言書とどちらが優先されるのか?

家族信託と遺言書のどちらが優先されるのか?家族信託は「自分の財産を託すことを家族と信託契約で締結するもの」です。遺言書は「自分の財産を誰にどれだけの財産を渡すのか意思表示する」です。家族信託も結んで、遺言書も書いたとき、どちらが優先されるのでしょうか?

答え   家族信託が優先されます

では、なぜ 家族信託 > 遺言書となるのか見てみましょう

【理由1】特別法である信託法は一般法の民法に優る

家族信託は信託法という法律(特別法)により定められております。一方で、遺言書は民法という法律(一般法)で定められています。基本的には特別法は一般法に優先するため、特別法である信託の方が有効となります。

【理由2】遺言書は新しい遺言書(=家族信託)が優先する

例えば、過去に遺言書を書いた場合、後から書いた遺言書と内容が抵触する場合、後から書いた遺言書の方が有効となります。(なお、過去に書いた遺言内容で後から書いた遺言書と抵触しない部分は過去の遺言書は有効となります)
民法1023条1項に「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」と規定されております。
従いまして、遺言書を一度書いて、その後に家族信託を結んだ場合、過去に書いた遺言の内容と家族信託の内容と抵触する場合、後の遺言(=家族信託)で新しく意思表示したことと見なされます。従いまして、一度遺言書を書いて、その後に家族信託で結び直した場合、家族信託の方が優先されることになります。(なお、遺言書の場合と同様に遺言書と家族信託の内容で抵触しない内容は前に書いた遺言書の内容は有効となります)

【理由3】信託した財産はもう自分の財産ではなくなる

例えば、先に家族信託を結んだあとに、遺言書を書いた場合ですが、先に家族信託を結んで、後からその家族信託で結んだ内容と抵触する内容の遺言書を書いた場合、この場合、先に結んだ家族信託の内容が優先されます。(なお、先に結んだ家族信託と後から書いた遺言書とで、抵触しない部分は後から書いた遺言書は有効となります)
それは、家族信託で信託した財産は、自分(委託者)の名義ではなく、家族(=受託者)の名義になっております。自分(委託者)は受益権をもっているだけです。信託した財産はすでに自分の財産、つまり相続財産ではなくなっていますので、遺言書を書いて、その財産を誰に渡すか決めても(意思表示しても)、そもそも自分の財産ではないので、その内容は無効となるからです。なお、受益権は相続の対象になりますが、家族信託では受益権は相続により承継しないと定めることが多いです。それは受益権を相続の対象にしてしまうと何代にもわたって相続(代襲相続など)されることになり、複雑な相続(つまり争続)になってしまうからです。一般的には「委託者の地位は相続により承継しない」旨の定めをして、権利関係が複雑になってしまうのを避けることが一般です。