家族信託のデメリット
家族信託は家族の中で財産管理と相続対策と事業承継等ができますが、デメリットは何でしょうか?
①初期費用がかかる
②損益通算ができなくなる
③信託口座を扱える金融機関が少ない
④信託できる財産に限りがある、身上監護権がない
⑤事例がまだ少ない(未知数の分野がある)
⑥信頼できる家族が必要になる
①初期費用がかかる
家族信託では家族と信託契約を結びますが、その信託内容の設計や公証役場での契約手続きなど専門家に頼む際に初期費用がかかります。その点はデメリットになります。成年後見制度では信託契約など不要になるので、初期費用は不要ですが、その代わり毎月のコストがかかります。毎月のコストは成年後見される方(認知症の方)が亡くなるまでかかります。成年後見人の費用は毎月3万円〜5万円かかります。仮に毎月4万円の成年後見人のコストがかかるとして、成年後見される方が10年間生きていたとして、4万円×12ヶ月×10年間=480万円のコストがかかります。その他、成年後見制度のデメリットはこちらの記事をご覧ください。
②損益通算ができなくなる
損益通算とは黒字と赤字を合算して利益を減らして、納める税金を節税する方法となります。例えば、親がアパートAとアパートBの二つを持っていたとします。ある年にアパートAは利益が100万円、アパートBは修繕が必要となり、▲50万円の赤字となったとします。
損益通算ができるとアパートAの100万円とアパートBの▲50万円を合算して利益50万円として納税することができます。例えば、アパートBは古くなっていて管理が大変だから家族信託で子供に管理を任せた場合、親がアパートAを所有して、子供が信託でアパートBを管理することになりますが、アパートAとアパートBとで損益通算ができなくなります。そうすると親はアパートAの利益100万円として納税することになります。当然、損益通算するよりも多く税金を払うことになります。
③信託口座を扱える金融機関がまだ少ない
委託者である親から財産を信託された預金は銀行に信託口座に預けて、受託者である子どもが管理していくことになりますが、このような家族信託口口座に対応している金融機関は少ないです。これから増えていくと思いますが、まだまだ少ないのが現状です。
東京では、東京三菱信託銀行、三井住友信託銀行、みずほ信託銀行、オリックス銀行、武蔵野銀行、城南信用金庫、さわやか信用金庫、芝信用金庫、西部信用金庫、世田谷信用金庫が信託口口座が開設できる金融機関として確認できております(2023年5月時点)。
ちなみに、東京三菱信託銀行、城南信用金庫、さわやか信用金庫は対象者が認知症になっても介護などで必要となった場合、預金の引き出しや振り込みができるサービスを始めています。
④ 信託できる財産に限りがある、身上監護権がない
信託できる財産はあくまで信託契約で定めた財産に限定されます。信託財産に含めていない財産は対象外となります。また、成年後見制度では身上監護権がありますが、家族信託では身上監護権がありませんので、認知症になって施設に入ったり、介護が必要になった際の手続きは家族信託では対応できません。
⑤事例がまた少ない
事例が少ないことから信託口座を作るにも金融機関で手間がかかったり、家族信託と相続や遺留分侵害額請求などとの関係などまだ事例が少なく、未知数の分野があります。事例が少ないこと自体は問題ではありませんが、ひとつひとつ確認しながら家族信託を進めていく必要がありますので、家族信託を始めようと思ってもすぐに開始できないということも考えられますので早めの検討をすることをおすすめいたします。