【家族信託】相続対策と相続税対策の違い

家族信託

家族信託でできること

家族信託では家族の中で財産管理と相続対策と事業承継等を柔軟に設計して、行うことができます。
この中に相続対策がありますが、相続税対策との違いについてまとめたいと思います。

家族信託での相続対策

家族信託では委託者である親は自分が認知症になっても、自分の死後に信託した財産や財産が生み出す利益を誰に、いくら、どのように渡すのかを信託契約により結ぶことができます。つまり、委託者である親が亡くなった場合にも遺産分割協議書を結ぶことなく、遺言書と同じ機能を達成することができます。
また、遺言書では自分が亡くなった後の相続についてしか決めることができませんが、家族信託では孫の世代以降の相続も決めることができます。つまり、家族信託契約書で財産の承継を定めることにより、一次受益者を受託者である子供に、受託者兼受益者である子供が亡くなった時に、二次受益者は孫と指定することができ、二次以降の相続を規定することによって、財産の承継も柔軟に行うことができます。

相続税対策

相続税対策とはいわゆる節税のことです。支払うべき相続税を減らすことになります。
一般的な相続税対策には以下のようなものがあります。
・暦年贈与(毎年110万円までの贈与が非課税となる制度)
・住宅取得資金贈与(20歳以上の子供や孫への住宅資金の贈与が一定額(省エネ住宅の場合、1200万円)非課税)
・相続財産の評価額を下げる方法(生命保険や小規模宅地特例)

しかしながら、家族信託での相続対策は、資産保全や資産運用することが目的になりますので、家族信託=相続税対策にはなりません。

事業承継

事業承継は生前に株式を後継者に譲渡することで行われますが、贈与税が発生したり、後継者に経営権が移って、現在の経営者が健在でもその後に経営に関与できなくなったりします。また、事前の事業承継を行わないと、現経営者が亡くなった場合、後継者が会社の経営権を失う可能性もあります。家族信託を利用して、株式を信託財産として、現経営者を受益者に指定して、指図権を後継者が有することにすれば、実質的な会社の経営を後継者である子供に移すことができ、また株主配当も継続して受け取ることができます。

家族信託での相続税対対策

・家族信託で信託財産を管理することにより、結果として相続税対策もできます。それは委託者(=親)が相続財産(=信託財産)を受託者(=子ども)に信託財産の処分権、管理権を委託する場合です。具体的には以下のケースです。

事例1  信託財産を使ってアパート経営する

・委託者(=親)が相続財産となる金銭を受託者(=子ども)に委託して、その金銭を使って、アパートを建築またはアパートや区分マンションを購入します。なお、不動産からの家賃収入は受益者(=親)とします。金銭はその金額がそのまま相続財産になりますが、不動産は評価額が減りますので、相続財産を減らすことができます。また、高齢の親(=委託者)にとって不動産経営は経験がなかったり、知識がなかったり、負担が大きいと思いますが、その負担を受託者(=子ども)を肩代わりして、相続税対策を行うことができます。また、子どもが収益不動産の処分権や管理権を持っていますので、親が認知症になっても大丈夫です。

事例2  遊んでいる土地を有効活用する

・親が将来的なアパート経営や駐車場経営を目的として、土地を所有している場合があったとします。そのまま、親が亡くなった場合、空き地は土地の評価額が高くなります。評価額が高いということは相続税も高くなる、ということです。土地の評価額はその土地の上に何もなかったり、所有しているだけだと、高くなります。ですので、アパートを建てたり、駐車場として整備したり、誰かに貸したりすると、土地の評価額は低くなります。最近ではカーシェアの駐車場や充電ステーションとしての活用も増えてきていますので、その土地の立地にも寄りますが、ニーズが多岐に広がっていると思います。カーシェアや充電ステーション用の土地としての活用の話は高齢の親にとってはとても面倒な話だと思います。その面倒な話を子どもが受託者となって、遊んでいる土地を有効活用してあげるという話です。

事例3  家族信託報酬を払う

・これは家族信託は委託者である親が受託者である子どもに財産を信託して管理してもらいますが、その信託財産の管理をする際に信託報酬を支払うやり方です。あまりにも高額な報酬は贈与と見做されて贈与税が課される可能性がありますが、適正な報酬(月に数万円程度)であれば、問題ありません。親が信託報酬を支払うことで相続財産を減らす事ができます。微々たる金額かもしれませんが、何もしないよりは良い節税対策になると思います。