尊厳死宣言(そんげんしせんげん)について

遺言書作成

もし、自分が事故に遭ったり、病気などになったりして、治る見込みがない状態になったとき、自らの意思で延命治療や延命処置を行うだけの医療を受けずに、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えたい、そう思う方も多いと思います。そのような延命治療をせず、自然な死を迎えたいという意思表示を「尊厳死宣言書(=リビング・ウィル)といいます。

尊厳死とは?

尊厳死とは、患者自らが自分の意志で、延命処置や延命治療を受けずに死を迎えることです。また人として尊厳を保ったまま迎える自然な死のことを指す言葉でもあります。つまり、尊厳死は不治の病にかかった患者が、自然の経過のまま、死を迎え入れることであり、本人の権限な判断の下になされた意思決定であり、自然死や平穏死と同義と考えられています。

尊厳死と安楽死の違い

 ■尊厳死=延命治療を施さずに、自然な最期を迎えること
 ■安楽死=人為的に寿命を短くさせること(→日本では犯罪とされています)

安楽死は本人の希望により、薬物等を用いて死に至らしめることを言います。欧米の一部の国(オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、カナダ、コロンビア、スイス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド)では国ごとに安楽死を認める具体的な条件や制約が異なりますが、安楽死を行うことができます。日本では先ほど述べたように安楽死を認めていませんので、犯罪となります。
なお、尊厳死の場合、積極的に疾患を治すための治療は行いませんが、苦痛を和らげるための十分な緩和ケアを施したうえで、死を迎える状態を表します。

尊厳死に必要な3つの要素

尊厳死で自然な死を迎えるためには3つの要素が必要になります。
1.死期が近づいていること
2.本人が文書などで尊厳死の希望を宣言していること=リビング・ウィル(Living Will)
3.家族も同意していること

尊厳死宣言書=リビング・ウィルとは?

「尊厳死宣言書=リビング・ウィル」は病気などの回復が見込みがなくなって、死期が迫っている場合、自分の意志で治療を打ち切り、延命措置をしない、自然な死を迎えたいという意思表示になります。この尊厳死宣言書は、本人が作成する場合と公証人と尊厳死の宣言の内容について話し合い、公正証書として作成する場合があります。

尊厳死宣言書には法律で定められておりませんが、以下の内容を盛り込む必要があります。
1.延命治療を行わず、尊厳死を希望するという内容とその理由
2.家族の同意があること
3.尊厳死を容認した医師、医療関係者に刑事上、民事上の責任を求めないこと

そして、上記の事項を「本人が撤廃しない限り」有効であるという旨の記述をもって、効力を発効します。つまり、事故や病気で意識が回復しなかった時でも、尊厳死宣言書は有効となります。もちろん、もし、気持ちが変わった場合は、撤回することもできます

尊厳死宣言書の具体的な記載内容とは?

尊厳死宣言書の記載内容の文例になります。

第1条 私○○○○は、私が将来病気に罹り、それが不治であり、かつ、死期が迫っている場合に備えて、私の家族及び私の医療に携わっている方々に以下の要望を宣言します。

1 私の疾病が現在の医学では不治の状態に陥り既に死期が迫っていると担当医を含む2名以上の医師により診断された場合には、死期を延ばすためだけの延命措置は一切行わないでください。

2 しかし、私の苦痛を和らげる処置は最大限実施してください。そのために、麻薬などの副作用により死亡時期が早まったとしてもかまいません。

第2条 この証書の作成に当たっては、あらかじめ私の家族である次の者の了解を得ています。

妻   ○ ○ ○ ○   昭和  年 月 日生
長男  ○ ○ ○ ○   平成  年 月 日生
長女  ○ ○ ○ ○   平成  年 月 日生

私に前条記載の症状が発生したときは、医師も家族も私の意思に従い、私が人間として尊厳を保った安らかな死を迎えることができるようご配慮ください。

第3条 私のこの宣言による要望を忠実に果して下さる方々に深く感謝申し上げます。そして、その方々が私の要望に従ってされた行為の一切の責任は、私自身にあります。警察、検察の関係者におかれましては、私の家族や医師が私の意思に沿った行動を執ったことにより、これら方々に対する犯罪捜査や訴追の対象とすることのないよう特にお願いします。

第4条 この宣言は、私の精神が健全な状態にあるときにしたものであります。したがって、私の精神が健全な状態にあるときに私自身が撤回しない限り、その効力を持続するものであることを明らかにしておきます。
                          (出典:岡山公証センターHPより)

尊厳死宣言書を公正証書にする場合

この尊厳死宣言書は、本人が作成することもできますが、ご自身で作成した場合、それは私文書と同じ扱いとなります。自分の最後の重要な意思表示を担保するためには尊厳死宣言書を「尊厳死宣言公正証書」として作成、保管することが重要になります。

最後までお読み頂きありがとうございました!