【成年後見】法定後見制度と任意後見制度の違い

家族信託

法定後見制度と任意後見制度

成年後見制度について記事を書いておりますが、成年後見制度には本人に判断する能力があるのか、それとも判断する能力がないのかによって2種類の制度があります。

法定後見制度

すでに判断能力が不十分な方、つまり、認知症になってしまった方のための制度になります。もっと言うと、認知症になってしまうとこの制度を使うしかありません。私たちが良く目にしたり、聞いたりする後見人はこの法定後見人だと思って良いと思います。

法定後見人は誰がどうやって選ぶのか?

法定後見制度は、すでに判断する能力が低下している場合に、本人の個別事情に応じて、家庭裁判所が適切な援助者を選びます。選ばれた援助者が必要なサポートを行います。
本人の認知症の程度を重度、中度、軽度と分けて、それぞれ後見人、保佐人、補助人を選任します。
認知症が
・重度(常に判断能力が欠けている状態の方)→後見人
・中度(判断能力が著しく不十分な方)→保佐人
・軽度(判断能力が不十分な方)→補助人

家族が後見人なれるとは限らない

法定後見人は家庭裁判所の裁判官が選びますが、いくら家族が後見人になりたいといっても家族が選ばれる可能性は約20%です。後見人は弁護士や司法書士や行政書士など士業が選ばれることが多いです。また、一度選任された後見人は原則、変更することができません。

法定後見人の費用はどれくらいかかる?

運よく、家族が後見人に選任されれば特段の費用は発生しませんが、弁護士などの士業が後見人に選任された場合、報酬が発生します。報酬は定めがあり、最低月2万円~(年24万円~)となります。具体的には後見人が1年間行った後見人業務を裁判所に報告して、裁判所がその業務内容を見て報酬を決定します。これが毎年続きます。基本的には認知症になった方が亡くなるまで続きます。仮に認知症になった方が施設に入って安定した生活を送ることができるようになっても、後見業務は継続しなければなりません。

任意後見制度

法定後見制度は認知症になってしまった後の制度になりますが、これに対して、任意後見制度は十分な判断能力があるうちに、ご自身が判断能力が不十分な状態になる場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ任意後見人にご自身の生活や療養介護や財産管理に関する事務について任意後見契約を公正証書で結んでおくという制度になります。

任意後見人は誰がいつどうやって選ぶのか?

任意後見制度はご自身の判断能力があるうちに、つまり元気で健康なうちに、ご自身の判断能力が不十分になった場合や認知症になった場合に、自身の生活や財産管理を委託する契約を結んで備えておく、という制度になります。具体的にはご自身と後見人との間で公正証書で任意後見契約を結ぶ手続きを行います。契約する能力があるうちに結ぶ必要があります。また、公正証書で結ぶことが法律で決められております。

家族が後見人になれるが、任意後見監督人が選任される

・家族を任意後見人に指名すれば、家族が後見人になることができますので、ここでは報酬は発生しませんが、家庭裁判所は任意後見人をチェックする任意監督人を選任いたします。任意後見監督人はその名の通り、任意後見人が適切に任意後見契約で定めた業務を行っているのか監督(チェック)します。

任意後見人の費用はどれくらいかかる?

任意後見監督人も法定後見人同様に士業が選任された場合、報酬が発生します。報酬の目安は法定後見人報酬の約半分くらいを見ておけばよいです。また、任意後見を途中で止める場合ですが、任意後見契約を解約する必要がありますが、その場合、ご本人に契約能力があることが条件となります。つまり、認知症になる前にご本人と任意後見人との間で解約契約の手続きが必要になります。

このように成年後見は法定後見制度でも任意後見制度でも家庭裁判所や士業をはじめ第三者が関与することを理解していおく必要があります。

項目法定後見制度任意後見制度
いつ始まるか本人が認知症になって、物忘れや判断能力が低下して預金の引き出しができない、契約ができないなど不都合が生じて、家族が家庭裁判所に申し立てたとき本人が将来の判断能力がなどが低下した場合に備えて、将来後見人になる人と契約を結んて、本人が認知症になったとき
いつ効力が始まるか家庭裁判所が後見人の選任したとき本人の判断能力が低下して、任意後見人が選任されたとき
誰が後見人になれるか家庭裁判所が選任した人(家族が後見人になれる確率:2割)本人が後見人と指名した人(家族が後見人になれます)
後見人の権限財産に関するすべての行為任意後見契約で定めた行為
後見人の取消権日常生活に関する行為を除くすべての法律行為なし
その他他に選択肢がなく、最終手段です。本人が元気なうち後見人を選ぶことができます。