特定技能と技能実習の違い

特定技能

特定技能(とくていぎのう)とは?

特定技能とは2019年に創設された制度で、人手不足とされる12の産業分野(14業種)で外国人が就労可能な在留資格(※)のことです。特定技能制度は、国内人材を確保することが困難な状況にある12の産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。

在留資格(ざいりゅうしかく)とは?

在留資格とは外国人が日本に合法的に滞在するための資格のことで、日本で滞在、就学、労働などの活動を行うために必要な許可や資格を指す入管法上の法的な資格となります。就労できない資格、就労可能な資格など、全部で29種類の資格があります。在留資格は法務省管轄の入国管理局が発行する外国人の在留許可証(=在留カード)で確認することができます。

ビザ(査証)との違い

在留資格はビザと呼ばれることもありますが、在留資格とビザは別物です。ビザは正式名称は「査証」ですが、ビザ(査証)は上陸審査の時に使用するもので、海外に住む外国人が日本への入国許可を求めるものです。ちなみにビザ(査証)を発効は法務省ではなく、外務省が行います。在留資格は外国人が日本で合法的に滞在するもので、就労可能な在留資格を「就労ビザ」と呼んでいます。

技能実習(ぎのうじっしゅう)とは?

特定技能と似たような呼び名で技能実習(ぎのうじっしゅう)があります。技能実習制度は外国人が日本で働きながら技術を学ぶという1993年に創設された制度であり、発展途上国の人材育成という国際貢献として開始されました。なお、技能実習生は2022年度は33万人と2011年度の14万人と比べて、2.3倍となっています。ちなみに1993年の日本のGDPはアメリカに次いで2位と経済的にも豊かな時代だったと言えますね(バブル崩壊前夜)。
技能実習生は建設業、食品製造業、耕種農業、機械加工の87の職種で、最長5年間、技能を学ぶことができます。技能実習制度の在留資格は、技能実習1号〜3号の3つがあり、技能実習1号から始まり、実技・学科試験に合格等の一定の要件を満たすことにより、2号・3号と進み、最長5年まで在留することができる制度の仕組みとなっています。技能実習生は労働者ではなく実習生であり、受け入れ企業には所属していますが、労働者ではないため、受け入れ企業との雇用関係はありません。

技能実習制度の問題点

1993年に発展途上国の人材育成という国際貢献という目的で創設された技能実習制度ですが、現在は実習生としてではなく、実質的に労働者として扱われており、日本の深刻な人手不足という状態から、実態は受け入れ企業の労働力の確保という目的となっているケースが多く、目的と実態が大きく乖離してしまっていることのより、多くの問題が発生しています。

【問題点1】技能実習生が労働者として扱われていること
技能実習生はあくまで「実習生」に分類されており、実習先が決まった後の転職(=違う受け入れ企業への転籍)は認められておりません。

【問題点2】違法な低賃金、長時間労働の強要、暴力やパワハラ
技能実習生は、学ぶことを目的としているため最低限の賃金の給与を支払えばよいことになっています。また、技能実習生は転職(違う受け入れ企業への異動)できないという制度を悪用した長時間労働の強要や暴力やパワハラといった問題が発生しています。

【問題点3】実習生の行方不明、失踪
現行の技能実習制度は実習期間が終了するまで我慢するか、職場から逃げ出すしかない状態となります。2021年に受け入れ先企業から逃げ出して行方不明、失踪した技能実習生の数は7000人にのぼります。また、2022年の技能実習生の失踪者数が9006人だったとの発表もありました。対前年比2000人です。なお、2017年の技能実習法の施行以降、2018年の9052人に次いで過去2番目の多さとなった。なお、失踪者を国籍・地域別に見ると、ベトナムが6016人で最多でした。

特定技能の制度が創設された背景

このように1993年に創設された技能実習制度は、約30年前のかなり古い制度であり、現在の日本の抱える課題、「貧困問題」「超少子高齢化」「人材不足」「後継者不足」「長時間労働」「待機児童」「介護問題」といった時代背景にそぐわない時代遅れの制度であり、技能実習に変わる新制度として特定技能制度が創設されました。政府は2023年秋には最終報告をまとめ、2024年以降に正式に変更される予定です。技能実習制度が廃止され新制度が創設することで、技能実習制度の問題点が解決されることが期待されていますが、その一方で、人材の確保を目的として技能実習生の受け入れをしてきた受け入れ企業の経営に影響を及ぼす可能性もあります。

技能実習制度見直しを巡る中間報告の主な内容(2023年4月)
■制度目的と運用実態が乖離している⇒技能実習制度を廃止する方向
■人手不足が深刻化し技能実習生が貴重な労働力となっている⇒人材確保と人材育成を目的とする新制度の創設
■転籍できないことで悪質な実習先企業から離れられず人権侵害を助長する可能性がある⇒転籍の制限を緩和する
■新制度の対象業種や分野は特定技能制度(人手不足の分野で外国人の労働が認められる在留資格)と一致させ、外国人労働者が中長期的に活躍できる制度の構築を図る
■不適切な就労を放置するなど悪質な監理団体がある⇒技能実習制度の管理団体に対する認定要件を厳格化する

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