当事務所では家族信託に関するトータルサービスを提供しております。
家族信託とは?
家族信託とはその名前の通り、「家族を信じて、資産や財産の管理を託する」ということです。
具体的には、親が認知症になる前に金銭や不動産など資産や財産を管理、保護するために家族と信託契約を締結して、信託財産を移転して、家族だけで資産や財産を管理、運営することです。
なぜ、家族信託が必要なのか?
なぜ、家族信託が必要になるのか?人生100年時代です。誰でも健康で元気で幸せに生活したいです。ただし、歳を重ねるにつれて体力や気力が衰えて、正しい判断ができなくなってきます。また、近年では認知症に伴い、自分のお金なのに銀行に預けたお金を下ろすことができない、自分の家や土地など不動産を売却したいけどできない、といったことが起きています。
2007年度高齢者白書によると、2012年は認知症患者数が約460万人、高齢者の15%の割合だった認知症患者数は2025年には高齢者の5人に1人の、20%が認知症になるという推計もあります。認知症による資産凍結や契約手続き不可といった問題に直面して、本人はもちろん、周りの家族が介護費用の捻出や生前の相続対策ができないといった事態に陥ってしまいます。このような問題の対策として家族信託が注目されるようになりました。
認知症になるとどんな問題が発生するのか?
問題1 本人名義の口座からお金が引き出せなくなる
認知症患者が資産凍結されると、財産が全て凍結されるため、生活費も含めて全ての資金が使えなくなります。例えば、銀行口座の凍結されます。銀行では口座名義人が認知症だと判断されると、その口座を凍結する可能性があります。家族が本人と一緒に銀行窓口に行って、親子関係を証明しても、本人の意思確認ができない以上、お金を引き出すことや動かすことはできません。これは預金の不正な引き出しや、預金口座が犯罪に悪用されないために行うものです。当然のことながら、定期預金の解約もできなくなります。これにより、認知症患者や家族は支払いが滞ることがあります。例えば、入院や施設費用、医療費、食費、光熱費、通信費等、生活に必要な支払いが滞ることになります。これは、患者や家族に多大な精神的・経済的負担を強いることになります。また、資産凍結により、患者自身や家族は、財産の管理ができなくなります。これにより、支払いや手続き等を行うことができなくなるため、多大な不便が生じます。例えば、税金、光熱費、水道光熱費、保険料等の支払いや、手続きが必要な住民票、パスポート等の手続きを行うことができなくなります。
問題2 自宅やアパート等の不動産の売却などできなくなる
認知症になると自宅やアパート等の不動産を売却することできなくなります。これは認知症患者は法律行為を有効に行うことができないものと見なされるからです。売買を行う不動産会社も法律行為ができない認知症患者との売買契約を行ったことが発覚すると売買契約が取り消しとなったり、営業停止処分など受ける可能性あります。高齢者施設に入るためには入居一時金や保証金など高額な初期費用が必要になることがあります。例えば、親が高齢で認知症になって日常生活もまともにできなくなったため、親の住んでいた家を売却して施設に入ろうとしても、家を売却するできず、その高額な初期費用を子供が負担しなければならない事態に陥ります。また、親が収益アパートや駐車場など経営していた場合、家族では不動産管理できないため、売却したくても売却できなくなります。アパート経営がうまくいっている間はまだ良いですが、アパートが老朽化して、空室が続いて、大規模修繕が必要になったとしてもできなくなる、まさに「負動産」化してしまう事態に陥ってしまいます。
問題3 遺産相続において、遺産分割協議ができなくなる
家族に相続人として認知症患者がいる場合、遺産分割協議など適切な財産分割ができなくなります。す。認知症患者は自分の意思を伝えたり、物事を正しく判断することできないと考えられており、相続人の中に1人でも認知症患者がいると遺産分割協議ができなくなります。このため、相続人全員の意思に基づく、自由な財産分割ができず、法定相続分の割合でしか財産分割できなくなります。また、相続財産に不動産が含まれている場合、不動産を共有にすると相続人全員の同意が必要となるため、自由な売却ができなくなります。また、不動産を相続した相続人がなくなるとその子供が代襲相続するため、複雑な権利関係となり、ますます売却等の処分ができなくなります。
家族信託を詳しく解説
家族信託とは自分が所有する現金や不動産などの財産を信頼できる家族に託して、管理、運用、処分してもらう資産管理方法のひとつとなります。
●委託者:財産の所有者であり、財産を託す人
(一般的には親)
●受託者:財産の管理、運用、処分を託される人
(一般的には子供)
●受益者:託された財産から経済的利益を受ける人(一般的には親)
委託者、受託者、受益者と3つの役割が出てきますが、家族信託では一般的には「委託者=受益者」として契約を結びます。家族信託では家族(一般的には子供)が受託者となるので、財産を預ける相手が自分の家族なので、家族会議などを開いて、家族や親族の中で自由に且つ柔軟に信託契約の内容を決めることができるのがメリットとなります。その他、信託監督人という受益者のために信託が適切に運営されているか監督を行う人がいます。信託監督人は受益者全員のために第三者の視点から信託全体の監督をする機能を担います。
したがって、家族信託は新しい資産管理方法であり、相続対策として注目を集めています。
家族信託でできること
家族信託は家族の中で財産管理と相続対策と事業承継など行うことできます。
財産管理
自分の貯金を家族信託に入れることにより、委託者である親が認知症を発症後に自分の介護費用や施設への入院費用として使うことができます。不動産の場合は受託者名義に変わるため、不動産賃貸管理の契約は受託者である子供が行うことができます。また、不動産賃貸の利益は受益者である親が変わらず受け取ることができます。
相続対策
家族信託では委託者である親は自分が認知症になっても、自分の死後に信託した財産や財産が生み出す利益を誰に、いくら、どのように渡すのかを信託契約により結ぶことができます。つまり、委託者である親が亡くった場合にも遺産分割協議書を結ぶことなく、遺言書と同じ機能を達成することができます。
また、遺言書では自分が亡くなった後の相続についてしか決めることができませんが、家族信託では孫の世代以降の相続も決めることができます。つまり、家族信託契約書で財産の承継を定めることにより、一次受益者を受託者である子供に、受託者兼受益者である子供が亡くなった時に、二次受益者は孫と指定することができ、二次以降の相続を規定することによって、財産の承継も柔軟に行うことができます。
事業承継
事業承継は生前に株式を後継者に譲渡することで行われますが、贈与税が発生したり、後継者に経営権が移って、現在の経営者が健在でもその後に経営に関与できなくなったりします。また、事前の事業承継を行わないと、現経営者が亡くなった場合、後継者が会社の経営権を失う可能性もあります。家族信託を利用して、株式を信託財産として、現経営者を受益者に指定して、指図権を後継者が有することにすれば、実質的な会社の経営を後継者である子供に移すことができ、また株主配当も継続して受け取ることができます。