宇宙活動法とリモートセンシング法の行政手続きと課題

宇宙ビジネスの手続き

人工衛星に搭載された装置により得られたデータの取り扱いに関する法律です。そこで、適正な取扱いを確保するため、大きく以下の3点を規律しています。装置と記録保持者と記録取扱う者の3つとなります。
①衛星リモートセンシング装置の使用に係る許可制度
②衛星リモートセンシング記録保有者の義務
③衛星リモートセンシング記録を取り扱う者の認定

衛星リモセン法の概要 内閣府HP

①衛星リモートセンシング装置の使用に係る許可制度

衛星リモートセンシング装置の使用者は内閣総理大臣の許可を得る必要があり、内閣府令で定められた申請書類を内閣府に提出しなければなりません。

衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律
(許可)

第四条 国内に所在する操作用無線設備を用いて衛星リモートセンシング装置の使用を行おうとする者(特定使用機関を除く。)は、衛星リモートセンシング装置ごとに、内閣総理大臣の許可を受けなければならない。
 前項の許可を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に内閣府令で定める書類を添えて、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。
 氏名又は名称及び住所
 衛星リモートセンシング装置の種類、構造及び性能
 衛星リモートセンシング装置が搭載された地球周回人工衛星の軌道
 操作用無線設備及び衛星リモートセンシング装置の操作を行うために必要な信号を他の無線設備を経由して送信する際に経由する無線設備(第六条第一号において「操作用無線設備等」という。)の場所、構造及び性能並びにこれらの管理の方法
 衛星リモートセンシング装置から送信された検出情報電磁的記録を受信するために必要な無線設備(受信する際に経由するものを含む。以下「受信設備」という。)の場所、構造及び性能並びにその管理の方法
 衛星リモートセンシング記録の管理の方法
 申請者が個人である場合には、申請者が死亡したときにその者に代わって衛星リモートセンシング装置の使用を行う者(以下「死亡時代理人」という。)の氏名又は名称及び住所
 その他内閣府令で定める事項

②衛星リモートセンシング記録保有者の義務

・衛星リモートセンシングは様々な情報を得ることができるため、テロリストなどの手に渡ると大変です。
・衛星リモセン装置を用いて取得した記録のうち、対象物判別制度、加工処理レベル、記録からの経過時間等を勘案し、国際社会の平和確保等に支障を及ぼすおそれがあるとして内閣府の定める基準に該当するものを指します。また、衛星リモセン記録については、提供先は認定を受けた者、または特定取扱機関に限られます。
・記録の漏洩等について必要かつ適切な措置を講じる義務も課せられています。衛星データとは、生データ、もしくはジオメトリ処理等行なった一時処理データを対象としているのであって、地図と重ね合わせることができるなどの高付加価値データについては適用対象外であり、使用に関して許可は必要ありません。すでに公開されているデータを使用するのは許可は不要です。むしろ、プライバシー(民法)や著作権(知的財産法)の問題となります。

③衛星リモートセンシング記録を取り扱う者の認定

・衛星リモセン記録を取り扱う者は、衛星リモセン記録を適切に取り扱うことができるものと認められる旨の内閣総理大臣の認定を受けることができます。そして、認定を受けるためには申請書の提出が必要となっています。認定を受けた者へは、衛星リモセン記録の取扱い状況についての帳簿記録義務が課されることになります。
・衛星リモートセンシングは様々な情報を得ることができるため、テロリストなどの手に渡ると大変です。従って、罰則も定められています。内閣総理大臣の許可なく衛星リモセン記録を、認定をうけていないものに提供した場合、「三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」こととされています。

宇宙活動法とリモートセンシング法の課題

世界的な競争や民間企業による宇宙ビジネスの参入のために法整備がされましたが、まだ整備が不十分な点が指摘されています。
①宇宙二法における許可・認可の審査基準があいまいである点
・先日の勉強会でも行政書士の先生がおっしゃいってましたが、明文化されていない点が多く、担当者の裁量に要するところが大きく(実際は担当者の上司の裁量)、審査基準があいまいな点があると言われていました。
②審査の期間も長期間に及ぶ点
・行政手続法では審査期間は4か月と定められているようですが、事前相談など含めると1年かかったケースもあるそうです。また、内閣府側の担当者も宇宙二法に精通しておらず、且つ異動などで内閣府の窓口の担当者が変わると、イチから説明するということもざらにあるようです。
③民間企業側も社内規定や運用が整備されておらず、手続きに不慣れな点
・宇宙ビジネスに参入する企業は大手だけではなくスタートアップが増えているようです。スタートアップ企業の場合、そもそも社内規定や体制など整備されていない、また、スタートアップ企業のスタッフは技術職が多く、このような行政手続きに長けた人材もいないということも課題としてあるようです。

ただ、課題は多いもののこの宇宙活動法と衛星リモートセンシング法の宇宙二法が制定された意義は大きく、科学技術的な面と法整備的な面とが両輪で回っていくことにより、日本としての宇宙ビジネスの将来が拓けてくると考えました。私は行政書士としてこの法整備的な面で支援ができるようになれたら良いなと考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。